2008年7月13日

prism


 暑い。今夜はふらっと海にでも行こうかと考える。何年か前の夏によく、鎌倉と湘南の間を走る江ノ電沿線、特に由比ヶ浜の山から海へ抜けるあたりを目指して、文庫本一冊をポケットに突っ込んで小田急線に乗った。昔は思い立ったら迷わず行動していたのだけれど、今は「いや、でも仕事が……」という思いが先に来る。

 大学在学中を振り返って(籍は今も置いているが)、映画みたいな日々だったなと思う。それはたぶん、本当に映画みたいな日々を過ごしていたからなのだろう。最近の僕の生活は、詩は生み出せても、映画になることはないだろう。自由は失われ、他者とのコミュニケーションが決定的に欠けている。

 たぶん、そう感じる時にこそ文学は必要なのだろう。ビジネスで人と相対峙する時には仮面をかぶらざるをえない。でも小説の登場人物に対して仮面をかぶる必要はない。だから、ふだん見過ごしてきた自分の心の表情が、はっきりと見える。「仮面をつけた姿が だんだん様になってゆく」のに気がつける。

 海へ行く代わりに、1号館前のベンチに横たわってジョンが教えてくれた小説を読んでいた。真夏の木陰で山田詠美。滋養豊富な『風味絶佳』。この作品を書ける作者が、またこういう感覚で生きられる人が、心底羨ましいと思った。内心くだらないと自嘲しながらビジネス書を読み続けていた分だけ、この一冊から感じることが大きかったのかもしれない。

 僕は仮面を剥いで生きていきたい。信条は、生活と仕事の一致だ。いつかそうなることを目指して、今日もビジネスの世界を走ろう。


 【フォト】 昨夜、銀座の某ワイン屋主宰のパーティーにて。ご招待いただいたこのパーティー、ワインはもちろん美味かったのだけれど、それ以上にご令嬢と大坂くんとの絡みが最高のつまみだった。

1 Comment:

匿名 さんのコメント...

馬場さんの日記読むといつも【本質】をしっかり見据えてはるなあと思います。

誤解を恐れずに言うならば
僕もテクニックではなくて、真心で生きられる人物になりたいと思います。

チャス!!