2008年7月7日

キーワードとスタイル化


 この一連のエントリーのはじめの「スタイル化の技術」において僕は、「スタイル化とは、世界にただ一人しかいない自分自身にぴったりのフォームを探り続ける、ということだ」と書いた。

 スタイルとは、その人に固有のものだ。英語だとか、ロジカルシンキングだとか、それをWHATにしようとする人がいるけれど、それは単なるツールに過ぎない。ツールは自分のスタイル作りに役立ちはしても、スタイルを決定づけるものにはならない。

 世界にただ一人しかいない「自分」が何(=「WHAT」)のスタイルを選ぶのかについては、自分自身と関連づけるしかない。具体的には僕の話をすることになるのだけれど、それは長くなるから後ですることにして。昨日は選んだスタイルによる中長期的な影響について書いた。今日はそのスタイルをどのように選ぶのかについて、つまりHOWの部分の話をしてみたい。

 スタイルの元になるのは、あくまで自分固有の物語(=ストーリー)だ。だいたいそれは、冷凍庫で凍っている。まずそれをしっかりと温めることからはじまる。そうして溶け出したストーリーをさらに熱し続けて、固形物だけを取り出す。その固形物とは、自分の核となるキーワード群のかたまりだ。

 キーワード群を取り出したら、次はそれをふるいにかける。それでも残るのがその時の自分のキーワードだ。このキーワードをしっかりと取り出すことが大切だ。これがスタイル化の核になる。僕はだいたいいつでもキーワードを5~7個くらいをストックしておくようにしている。

 もう少し具体的に述べれば、僕は自分というストーリーを人と語ることで「温め」、文章に書くことで「結晶化させ」、時という「ふるいにかける」という一連の作業を経て抽出している。いちど抽出してしまえば冷凍庫に入れずともストックしておける。

 キーワードという使いやすい形にして、いつでも手元にストックしておく。そうすることで、そのキーワードに近いものに出会った時にすぐさま反応できる。次第にそのキーワードを中心とした新しいストーリーができる。そして然るべき時にまた抽出の作業を行う。

 繰り返し行われて抽出されたキーワード。そのいくつかを組み合わせることで、世界に自分だけと自信を持って語れるスタイルを確保する。これが僕のスタイル化のやり方だ。

 自分の指向性や専門性や人間関係を拠り所に「自分にしか生み出せない価値」(さまざまな要素からなる複合技)を定義して常に情報を発信していくこと(ブログが名刺になるくらいに。自分にとって大切ないくつかのキーワードの組み合わせで検索すると自分のエントリーが上位に並ぶようなイメージ)。(梅田望夫『ウェブ時代をゆく』 P102)

 僕がどのようなキーワードをストックしているのかについては、ここでは触れない。正直に言えばまだ自信を持って語れないのだ。でも僕の人生を知り、このblogを注意深く読んでいる人であれば、ある程度は察することができるのではないかと思う。

 僕自身、だいたいの道筋は見えている。これから新しい経験をして、人と語り、こうしてblogを書き、そして時を経ることで、僕のスタイルは少しずつ確固たるものになっていくと思う。すくなくとも、この一連のエントリーを書き終える頃には、多少なりとも自信の持てるスタイルを確立させていたい。

 僕のスタイル化のやり方が、こうして読んでくれているあなたをはじめ、誰かの役に立つのかは分からない。たぶん、ひとりひとりやり方は違うのだろう。ただ最近「スタイル化の名手」とたびたび出会うようになり、そうした人々が共通して「生の推進力」のようなものを持っていることは確かだと感じている。

 【フォト】 中に入れなかった井上雄彦展。スタイル化の極致。。。