2009年3月12日

出会いと別れ

 いちばん仲のよかった同期の転勤が決まり、入れ替わるように、もっとも愛した後輩の一人が東京へやってくる。春は小さな頃から出会いと別れの季節だったが、それは大人になっても変わらないらしい。

 いちばん仲のよかった同期とは今後とも毎週会っていくものだと思っていたから、九州への転勤を聞かされた時には驚いた。でも、時間的空間的に世界が狭くなった現代において、互いの住む場所が離れることが単純にマイナスだとも思わない。

 と言って新天地での活躍を祈ろうと思っていたのも束の間、転勤先のビルの別フロアには、僕らの仲間の一人が働いているとのこと。人生、どこでどう巡り会うものか分からない。きっとこれは僕らの物語の序章なのだろう。

 春という季節は僕らにさまざまな彩りを添えてくれるけれど、それを象徴するのは出会いと別れ。大きな物語を彩るには、それが劇的に現れることが欠かせないに違いない。

 僕らが綴っているのは、ささやかな、まだ誰にも聞かれることのない物語。しかしそれは、まったく別の方角を向いていた小川がやがて合流して大河に変わるように、うねりながら多くの支流を飲み込んで、壮大な物語になるのだと思う。

 小さな物語が寄り集まり、大きな物語となって、やがて多くの人の心を震わせるだろう。いや、震わせなくちゃならない。この春の出会いと別れも、その彩りのひとつに違いない。大法螺吹きに思われようとも、僕はそんな確信にも似た思いを抱いている。